TOP     展示開発事業団とは     分節する風景     tumblr.      mail     芸術祭2012


 分節する風景

 

 

 展示開発事業団は発足して3度目となる展示を、メンバーの脱退・新規加入を経た新たな5人で迎える。


今回の芸術祭で、私たちはこの5人の個性が互いにぶつかり合い、そこから止揚されるように立ち現われてくるものがあるのではないかと考えた。
これまで行ってきた、それぞれの作品を結び付ける事から一歩踏み込んで、5人で一つの場を提示する事にした。


議論を重ねるうちに浮かび上がったのは「増殖」や「生成変化」という言葉だった。
一人がある形を作り、それに触発された他の誰かが直前の痕跡を打ち消さない程度に手を加えていく。
それが連なり、反応し、響き合う。
時に全体を壊してリセットしたり、大きく纏めたりといった段階を経て、自分たちでも予期しない方向へと作品が展開していくというものだ。


それを具現化するのには「都市」がモデルになるのではないかと思われた。
一つ一つの構造体は特定の意図に基づいて建設されるが、その全体像はスプロール現象に見られるように、無計画に拡大し、そして消滅していく。
それはアルゴリズムによる自己組織過程と相似しているようでもあり、微小の生命を顕微鏡で覗くようでもある。


都市が成立するには、その基盤である土地の存在が前提となる。
しかしそれはあくまで仮象である。
ひとたび街が波に呑まれれば、グラウンドとしていた海抜0mは呆気なく覆ってしまう。
いや、そもそもグラウンドなどないのだ。
それは恣意的に設定された虚構に過ぎない。


この「街」は大きな船の上に据えられた。
船上に築かれて漂流する都市というわけだ。
変化に逆らわず、外部からの力を柔軟に受け止め、浮遊する。
私たちはスケッチを基に設計図を描き、それを3DCGによってレンダリングした。
そこから水平方向の断面を抽出し、板材に写し取って切り出すという行程を繰り返した。
輪切り状の各部材を順番通りに積み上げ、170以上の層によって全体像が出来上がった。


単一の構造を持った空間は層によって切り刻まれ、分化する。
そして相互に関連を保ちつつも独立した組織的な部分を形成する。
一つに融合し、確固としたものと思われていた空間も、線的に連なった時間も、もはや存在しないのだ。


船は分断された時空に停泊中。
単純化された観念を捨て去った、豊かさの果ての過剰の海へと向けて出航する。

 

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